※10年前のアプリ当時のテキストです。今後修正を加えていく可能性が大アリです。
※けっこう長めのテキストになります。てっとりばやく「答え」がほしい方は、14の「やっとこ本題です。」というところから読んでみてください。
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音・騒音とともにひとり暮らしの悩みとしてよく挙げられるのが、ひとり暮らしの淋しさの問題なのだそうです。
自由・気ままなひとり暮らし。淋しさは、そうしたものの代償みたいなものかもしれません。
しかし、そうした淋しさを解消しようとする時、決まって立ちはだかるのが「コミュニケーションの壁」だったりします。
10代向けのテレビ番組では、自身のコミュニケーション能力に不安を持っている人が全体の8割以上という結果がでていました。
憶測を挟みますが、たぶんそれは、大人になる過程で解消されていく類の悩みというわけでも、そうそうないでしょう。
ここからは4つの記事にまたがって、コミュニケーションについての問題を取り上げてみようと思います。
たぶん、皆さんの予想している「コミュニケーションについての文章」からは、だいぶナナメ上(もしくは下)をいっていると思いますが、読み進めていただければ、きっとおもしろいものなんじゃないかなと思っています。
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ある時に機会を得て、私は40人ぐらいの方を対象に、「コミュニケーション」をテーマとした、あるアンケートを取ってみたことがありました。
集まっていたのは、大学生の方や働いている方がほとんどだったようです
質問は、全部で3つ。
ひとつ目は、「皆さんの中で、コミュニケーションは大事だと思っている、という人は、手を挙げてみてください」。
全員が手を挙げてくださいます。
(まあ挙げますわね、普通)
二つ目は「自分はコミュニケーションが得意だよ、という人は手を挙げてみてください」。
今度はその場のモデレータの方以外は、全員手を降ろしたままでした。
最後。「皆さんそれぞれ、コミュニケーションというものについて自分なりの『解釈』があると思うのですが、いまこの場でそれを見せ合ってみたとして、その『解釈』が全員一致する、と思う人は、手を挙げてみてください」。
参加者の中から、一人だけ手を挙げました。
アンケートはこれでおしまいです。
大づかみで「40人のうち、ほぼ全員がコミュニケーションを大事なもので、苦手なもので、それぞれの持つ解釈は一致しないものとしてと受け止めている」といった様子が見てとれるようです。
(ほんとのことを言うと、最後の質問では誰も手を挙げないだろうと思っていたのですが、そこはいまはちょっと、目をつむります)
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さて、この結果を見てみて、たとえばあなたは、どんな風に感じるでしょうか。
私にとっては、この結果は大体予想通りで、それゆえ、やっぱりとても困った事態だ、と思えるようなものなのです。
たとえば初対面の「コミュニケーションをとても大事にしている」2人が、仕事のために打ち合わせをしたとします。
ここで、そのコミュニケーションの意味を、一人が「(初対面だから)場を盛り上げて親近感を持ってもらうこと」と解釈する人で、もう一人が「(初対面だから)こちらの想いをなるだけ正確に伝えること」と解釈する人だとしたら、この場におけるコミュニケーションは、果たして「成立する」でしょうか。
(繰り返しますが、この二人はどちらも「コミュニケーションをとても大事にしている」のです)
いまのお話を踏まえてみた上で。
仕事の場やその会議の場、教育の現場、家庭、その他。
社会を構成している、様々な場における「コミュニケーション」は、果たしていま、成立し得ている、ということができるのでしょうか。
私は、人それぞれが持つ「コミュニケーションが大事だ」という意識と、しかしその一方で不一致であり続ける「コミュニケーションの解釈/定義」とが、実はその「不全」を生み出す土壌になってしまっているんじゃないかと考えるようになりました。
(先ほどのアンケートの中での「コミュニケーションの解釈は一致する」という反応も、その不一致に内包されているという意味で実は矛盾しないのです)
すこし大きなお話になりますが、ひょっとするとその不全は、ずいぶん長い間この国を取り巻いてきた「閉塞感」とか「喪われた十年」とか呼ばれるものの一因なんじゃないかとさえ考えたりします。
国家や経済とは、膨大なコミュニケーションの集積の果てで成り立つ、と思うからです。
(だとしたら、大問題でしょ?)
トピックひとつ分、一つの大きな前置きとしましたが、ですからここでは、いままで「コミュニケーション」と呼ばれてきたものを解体し(解き)、そして再構築してみる(結ぶ)という作業をやってみたい、と思っています。
なぜここでそんな作業をし、そして皆さんにお見せしなければならないのか。
なぜならそれが、最初にお話しした、多くの人が抱えているらしいコミュニケーションへの苦手意識そのものを解(ほど)くことにも繋がっていくだろうし、『自分マネジメント』というものについてお話しする際にも、とても大切になる。
そんなふうに考えているからなのです。
(続きます)
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