【祝・観客動員1,000万人超&興行収入157億円】ネタバレなし:映画『THE FIRST SLAM DUNK』は映画館で観るべき作品か?

【ネタバレなし:いよいよ8/31終映】映画『THE FIRST SLAM DUNK』は映画館で観るべき作品か?

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 2023年4月26日(水)グランドシネマサンシャイン、そこから間が空いて8月6日(日)吉祥寺アップリンクにて映画『THE FIRST SLAM DUNK』を観てきました。以下、その感想・評価をご紹介して参りたいと思いますー!

※映画の内容について、公式サイトなどからすでに紹介・開示されているアウトラインに沿う形で触れます。

■たのさんの個人的評価は4.8点(5.0点満点)

 採点(という言い方は正直偉そうでほんと嫌なんですが)は4.8点(5.0満点)

 一回目鑑賞し終えた時点での点数は「4.2」。でもどうしても違和感というか、ちゃんと評価できてないないよな、と思う部分があって、2回目を観に行きました。4.8点は2回目の点数です。

 結果として、『M:I デッドレコニング』『エブリシング・エブリウェア〜』の4.7点を超えて、今年観た映画の最高点になりました。(ただ、これはやっぱり子どもの頃に原作を読んできた思い出補正込みの点数なのかなとも思います)

 言うまでもなく「気になってるなら“絶対”映画館で観た方がいいよ!」な作品です。

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© 2022 THE FIRST SLAM DUNK Film Partners

■1回目はBESTIAのDOLBY ATMOSで鑑賞。しかしこれは誤算だった

 1回目の鑑賞はグランドシネマサンシャイン(池袋)の「BESTIA」。音響的にたぶん日本で最高クラスのスクリーンで(スクリーン自体もデカい!)、4月も終わりに差し掛かった段階で観られる環境としては最高のものを選んだんですが、これが正直よくなかった。

 原因は「音」。鼓膜の許容レベルを超えるほどの音圧が、特に(バンドのファンの方には特に申し訳ないのですが)バンドサウンドが展開する状況でひどかった。

 これは私だけでなくて、私の席の隣の方ですとか、特に女性の方には、上記の状況で耳を塞いでいる方が多かったです。だもんで、エンドロールについても、それが始まった途端に席を立つ人が少なくなかったです。

 で、そこらへんが気になってしまうと、やっぱり映画の内容自体も入ってこない部分が増えて、結果的に消化不良になってしまう部分が少なくなかった。

「映画はよかったけど、あの音圧はねーよな…」

 それが1回目の感想で、「4.2点」の根拠かなと思います。

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※画像は公開されているPVよりキャプチャしたものです

■いや、でも、あの状況で「4.2」ということは…?

 で、まあ正直全体としてはマイナス印象だったんですが、逆にそれが引っかかってしまいまして。私の評価点のレンジで言うと、4.0点以上は「人に映画館で観るのを勧めたい作品」に入るんです。

 で、上記のように(制作スタッフ以下の皆様には本当に申し訳ないですが)不満の残る状況で「4.2」なら、そのマイナスを取っ払った状態(ちがうスクリーンで観れば音の環境はよくなるだろうことは明白だったので)で観てみたらどれほどのものになるんだろう…という興味がむくむくと湧いてきてしまいまして。

 で、2回目の鑑賞に至るわけです。

 そしてその判断は正しかった、」と───。※自賛。

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※画像は公開されているPVよりキャプチャしたものです

■宮城リョータの「17年」と「40分」の物語。

 今回の『THE FIRST SLAM DUNK』は湘北のメンバー、一番背の小さいキャラクターである、宮城リョータ(2年生)の視点を軸に描かれます。

 おそらくは出生の地であろう沖縄から始まる、宮城リョータの17年間の人生と、最強・山王との、湘北にとっての実質「決勝戦*」ともいうべき、40分の“死闘”。この二つの流れが交錯する形で物語が進んでいきます。

 ただ、原作からこの作品に触れてきた方にとっては、連載が終わった1996年6月からの26年という時間・物語もここに絡まるんだろうなと思います(点数で「思い出補正」に言及したのはそのためで、だからまったく初見の方なんかは、もうすこし差っ引いて考えてもいいのかもしれません)。

 幾重にも交錯する「過去」と「現在」は、ともすれば冗長なものに感じられてしまうかもしれませんが、ただこれも制作側の意図的なもの、「仕掛け」であるようにも思いました。

 逆に、リョータの視点で描かれているからこそ、省かれているものもあります。正直「えええっあれないの!?」と思わなかったでもないですし、いまでも入れて欲しかった気持ちは残りますが、これはこれでいいのかなとも思います(“何”が省かれているかはご自身で確かめてみてくださいね)。

*原作では山王との“決戦”はインターハイ(全国大会)のトーナメント2回戦として描かれますが、本作ではそれは(たぶん)はっきりとは明示されていません。

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※画像は公開されているPVよりキャプチャしたものです

■Dr.T(たのさん)の(ためになる)バスケット入門

 さてここで、小学校・中学校でバスケをやっていたというたのさんによる、バスケットの簡単なルール説明を挟んでおきます。というのは、「これバスケットの知識がない人が観たら「どうしてこうなるの?」と消化不良になるんじゃないのかな」と思う部分が多々あって、それが2回目を見終えてもやっぱり引っかかっているからです。

 急ぎ足で、簡単に。

・通常のフィールドゴールは2点、フリースローは1点、自陣(自分達の守るゴールがある側のコート半分が自陣)コート内に半円で描かれた「3Pライン」の外からシュートが入ると3点。
・ボールを持ったままドリブルせずに3歩歩くと「トラベリング」。審判のジェスチャーは「腕ぐるぐる」。※うまい人でもけっこうやる。
・2回目のドリブルを始めてしまうと「ダブルドリブル」。審判のジェスチャーは「両手を交互に上下にバタバタ」。※うまい人でもけっこうやる。
・相手にゴールを決められたら、ゴール下のエンドラインからリスタート。この時、ボールを5秒以内にコート内に入れないとバイオレーション(反則)。さらに、ボールをコートに入れたら8秒以内に相手側のコートまでボールを運ばないとバイオレーション。
・さらにさらに、上記の8秒も含めて24秒以内にシュートを打つところまで持っていかないとこれもバイオレーション。
・さらに×3、自チームがボールをもっている時にフリースローラインからゴール下のエリアに3秒以上滞在してしまうとこれもバイオレーションになります。
・ボールに対しての接触はOK、体への接触は「ファウル」。ボールを持っている側がファウルを取られる「チャージング」もあり。
・ボールを持っている人がシュートの体制に入っている場合にファウルをすると、入る/入らないに関わらずシュートをした選手にフリースロー2本が与えられます。
・故意の悪質なファウル(接触など)は「インテンショナルファウル(現在はアンスポーツマンライクファウル)」となり、相手にフリースロー2本(ショート時のファウルであれば3本)が与えられ、さらにフリースローが終わったあとも、ファウルされた側のスローインからゲームが再開されます。なかなかイタい所業。

 こんなところでしょうか。本編のなかで実際に出てきたものからピックアップしており、これ以外にもルールはいろいろあります。

ウホッ。
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※画像は公開されているPVよりキャプチャしたものです

 なお、山王工業のモデルとされているのは、秋田県の能代工業(秋田県立能代工業高等学校)という高校です。全国高等学校総合体育大会(インターハイ)56回、国民体育大会(国体)49回、全国高等学校バスケットボール選手権大会(ウインターカップ)49回出場し、うちそれぞれ22回、16回、20回優勝と、全国大会出場の常連というより全国大会優勝の常連校と表現していい学校です(データはウィキペディアより)。

 日本人初のNBAプレーヤーとして知られる田臥勇太氏(現Bリーグ・宇都宮ブレックス)も出身の一人で、在籍時には3年連続で高校総体、国体、全国高校選抜の3大タイトルを制し、史上初の「9冠」を達成、公式戦の敗けは1試合のみ(1年時から即スタメン)と、それこそマンガみたいな記録を打ち立てた方です。

■技術サイドから見る『THE FIRST SLAM DUNK』とタイトルに込められた意味

 今作で最も嬉しかったのが、選手たちの動きが、ちゃんとした「バスケットの動き」になっていること。

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※画像は公開されているPVよりキャプチャしたものです

 原作をリアルタイムで追ってきた、とお話ししましたが、実はTVアニメのほうは初見でみるのをやめてしまったんですよね。その根本的な理由がこれで、(TVアニメ版のファンの方には本当に申し訳ないのですが、)やっぱりバスケの動きになっていないのに、感情移入はできないよなっていうのが、バスケットマンたのさんとしては多分にありまして。

 ちょっと話が脱線しますが、同じような絶望を最近別のバスケットマンガのアニメ化でも経験しまして、正直原作へのリスペクトが欠片も感じられないなと思ってしまうわけです。

 井上氏の元に東映アニメーションから映画化の打診がきたのが、2009年のことだったそうです。その時のパイロット版を見せられた井上氏の思いも上記と同じようだったようで、以降、東映とのやりとり(つまり、「お願いします」と「やはりできません」のやりとり)は2014年まで続くことになったそうです。

 ついにゴーサインを出した井上氏が「パイロット版を作ったスタッフの情熱が、僕の心の中にあった気持ちを後押ししてくれた。だからできた映画なんです」と語っているその言葉通り、その動きはバスケットの動きそのもののそれにまで昇華されており、やはりこのレベル、これは井上氏の言葉ではありませんし、制作スタッフの方に対してともすれば大変な失礼になってしまいますけども、「ウソのない絵」でなければ紡げなかった物語があるんだよなと感じさせます。

 本編はまず、おそらく山王戦に臨むリョータがロッカーの扉を締めるところ、ついで、「沖縄編」へと移るわけですが、この情景が美しい。まず思ったのが「バガボンドの風景だ」でした。

波と水の表現がアニメ屈指といっていいほど美しい
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※画像は公開されているPVよりキャプチャしたものです

「バガボンド」は水彩風の情景描写もこの上なく美しい作品なんですが、その色彩感覚が落とし込まれたような情景はやっぱり美しい。で、おもしろいことに、その汗臭さとは対極の地点にありそうな色彩が、そのまま試合のシーンでも使われているんですね。

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※画像は公開されているPVよりキャプチャしたものです

 オープンニングのアイデアも素晴らしかった。マンガとアニメーションを見事に「繋げて」いるんですよ。つまり26年を単に区別して切り離すだけじゃなくて、「地続き」の部分はちゃんと繋げてもいるんですね。観ていて鳥肌ものでした。もうここで涙ぐんでいるように見えた人も散見されたぐらい、技ありものの演出でした。

 それと音響、ゲーム(試合)の序盤で、スローモーションのリョータのドリブルに合わせて、座席を突き上げるような音が響き上がるんですね。これがね、いいんですよ。これもまた劇場でないと味わえない、素晴らしい演出だと思います。

 キャラクターの描写がリアルに徹底されているからこそ、基本的な場面で、「デッドレコニング」評でも触れた緩急の「緩」の部分、本作でいえばディフォルメされたキャラクターたちの立ち回りはほとんどありません。が、たぶんですが、その「緩」(もしくは「静」と「動」でいうところの「静」の部分)を担うという意味でも過去編は存在したのでしょう。

 チビキャラたちの立ち回りも「スラムダンク」の魅力の一つだと思いますが、その出番が少なくなっても面白味の減少的なものはさほど感じませんでした。

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※画像は公開されているPVよりキャプチャしたものです

 ちなみにタイトルの『THE FIRST』に込められた意味合いですが、井上氏へのインタビューによると「意味を具体的に落とし込んだタイトルではなく、もっとぼんやりというか意味がなくてもいいくらいのタイトルの方がふさわしいのではないかと」「一番は先入観を持たれたくない。昔のテレビアニメの延長でもないし、マンガとつながってはいるけどアニメ映画という点では同じ根から生えた別の木とも言える。『SLAM DUNK2』でもないぞと。ひとつ独立した固有の命みたいな意味合いを持たせたかった。マンガの読者、テレビアニメの視聴者にとって今作は初見ではないけど、初めて観た時のワクワクを改めて味わってもらいたいという思いを込めて。そしてもちろん、今回初めて観る人に対して、ほかにもいろんな意味を込めて」というふうに語っています。

 どちらかというと、映画の中身よりは外身的な意味合いから落とし込まれ名づけられたタイトルのようですね。

■まとめと声優の交代について

 だいぶ長くなってしまいましたーごめんなさいー。まとめです。

 たのさん的採点は4.8点。「思い出補正」も間違いなくありますが、それを差し引いても素晴らしい傑作です。特に音響面での演出は素晴らしく、この一点でも、劇場、スクリーンで見る価値は(「スラムダンク」という物語と、この物語が紡いだ27年の歴史を知らない方でも)あるんじゃないかなと思います。スクリーンはそんなに大きくなくても大丈夫!

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※画像は公開されているPVよりキャプチャしたものです

 発表時に物議を醸した声優の交代ですが、これは『リトル・マーメイド』評でも書いた通り、「TVアニメ版こそが自分にとってのファーストだ」と大事にする方の気持ちもよくわかるつもりです(私は前述の通りTVアニメ版から早々に撤退したのでその意味での被害は最小限だったと表現しても構わないと思いますが、それでも声に違和感が持ったのは確かです。自分でもこれはびっくりしましたが)。

 でも、それを理由に観に行かないのはちょっともったいないかな、とも思います。

 もし、すこしでも気になるようであれば、ぜひ。

 あ、ちなみにエンドロールのあとにもワンカットあります。「ベタなカット」と言ってしまえばそれまでですが、物語の帰結点です。ぜひ見届けてほしいです。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

■作品データ&評価

・タイトル:『THE FIRST SLAM DUNK』
・監督:井上雄彦
・脚本:井上雄彦
・原作:井上雄彦
・出演者(役名):宮城リョータ(仲村宗悟/少年期:島袋美由利)、三井寿(笠間淳)、流川楓(神尾晋一郎)、桜木花道(木村昴)、赤木剛憲(三宅健太)、彩子(瀬戸麻沙美)、赤木晴子(坂本真綾)
・音楽:武部聡志、TAKUMA(10-FEET)
・上映時間:124分
・公開日:2022年12月3日(日本)
・映画.com:4.2/5.0(2023/08/14現在・1072件)
・Filmarks:4.4/5.0(2023/08/14現在・107,627件)
・Yahoo映画:4.3/5.0(2023/08/14現在・13,731票)※Yahoo映画は7/31日にサービスを終了
・Movie Walker:4.6/5.0(2023/08/14現在・9473件)
・Google:96% のユーザーがこの映画を高く評価(2023/08/14現在)

■ #ABOUT SLAM DUNK(公式サイトより)

週刊少年ジャンプ(集英社)1990年42号から1996年27号まで連載された、井上雄彦による少年漫画。高校バスケを題材に選手たちの人間的成長を描き、国内におけるシリーズ累計発行部数は1億2000万部以上。その影響からバスケを始める少年少女が続出し、テレビアニメ(1993年10月~1996年3月)やゲームなども製作された。2006年、若いバスケットボール選手を支援するための「スラムダンク奨学金」が設立される。2018年、全カバーイラスト描き下ろし、物語の節目ごとに巻を区切り直した新装再編版(全20巻)刊行。2020年、イラスト集『PLUS / SLAM DUNK ILLUSTRATIONS 2』刊行、連載開始から30周年を迎えた。

■ #PROLOGUE(公式サイトより)

いつも余裕をかましながら、
頭脳的なプレーと電光石火のスピードで相手を翻弄する
湘北の切り込み隊長、ポイントガード・宮城リョータ。

沖縄で生まれ育ったリョータには3つ上の兄がいた。
幼い頃から地元で有名な選手だった兄の背中を追うように
リョータもバスケにのめりこむ。

高校2年生になったリョータは、
湘北高校バスケ部で、桜木、流川、赤城、三井たちとインターハイに出場。
今まさに王者、山王工業に挑もうとしていた────。

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※画像は公開されているPVよりキャプチャしたものです

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